報告

各所からの要望により、一部の人だけに送っていた論文要約をブログにも書くことにしました。論文要約のボリュームが大きすぎるので練習報告はお蔵入りです。(15,000字さようなら)

1/17

論文要約

心拍変動(HRV)について

自転車競技ではTSSによる負荷の管理が一般的ですが、実際には睡眠不足などのストレスがある状態では、TSSと実際の身体へのダメージは異なります。HRV(Heart Rate Variability)は、睡眠中の心拍の揺らぎを測定することで、自律神経のバランスを数値化し、その日の身体がハードな練習を受け入れられる状態かを判断する指標になるらしいです。心拍の間隔が変動する時間の幅をミリ秒単位で測定しHRVとして数値が生成されているようです。

HRVが高いと副交感神経が優位で、身体が回復に回っていて高強度トレーニングに適応できる準備ができている状態らしいです。

HRVが低いと交感神経が優位又は自律神経が疲弊している状態らしいです。過剰な負荷の兆候でパフォーマンス向上ではなく、故障や慢性疲労のリスクがあるらしいです。

計測の方法は色々あるので予算に合わせて調べてもらうのが良いかなと思いますが、一応山﨑はガーミンのスマートウォッチでHRVの測定をしています。

引用元の研究結果では、「HRVに基づいて強度を決めるグループ」と「従来通りの計画グループ」で比較した時に、HRVのグループの方がより少ない高強度練習回数で最大出力やOBLAが大幅に向上させることができたらしい。

ちなみに去年の全日本前のマリノ選手のHRVは114msだったらしい。山崎は良いときは130ms以上まで行きます。身体の状態によってかなり分かりやすく数値に傾向が出るので、自分の経験上でもかなりおすすめの身体の状態の指標になるデータです。

引用元

Kiviniemi, A. M., et al. (2007). “Endurance training guided individually by daily heart rate variability measurements.” European Journal of Applied Physiology.

Javaloyes, A., et al. (2019). “Training Prescription Guided by Heart Rate Variability in Cyclists.” International Journal of Sports Physiology and Performance.

Vesterinen, V., et al. (2016). “Heart rate variability in prediction of individual adaptation to endurance training in runners.” Journal of Sports Sciences.

次回:高地トレーニング

1/18

論文要約

高地トレーニング

高地(低酸素環境)に滞在すると、体内ではエリスロポエチンの分泌が促進され、ヘモグロビン量(酸素運搬能力)が増加する。

しかし、高地は酸素が薄いため、低地と同じワットが出せない。結果として、心肺機能には負荷がかかっても、絶対的なパワー出力の不足で筋肉や神経系への刺激が足りなくなり、足が劣る状態になります。それを解決できるのが、LHTL(Live High Train Low)戦略です。

Live Highでは、蓼科山荘のような高地に滞在して血液の酸素運搬能力を向上させる。Train Lowでは、酸素が十分な標高1,000m以下まで降りて高強度系の練習することで、筋肉の出力を損なわないようにできるらしいです。

下記の引用元の論文には、「高地住、高地練」「低地住、低地練」「高地住、低地練(LHTL)」のグループの中で、LHTLグループのみがVo2maxを優位に向上させたらしい。高地住高地練グループは血液データは改善されたが、練習強度の低下でタイム向上に繋がらなかったらしい。ちなみに、赤血球の増多には連続4週間滞在する必要もあるらしい。が、短くても少しは効果があると思う。

高地滞在中は赤血球を作る材料に鉄分が必要で鉄分の消費が激しくなるので、必要に応じてサプリメントで補填する必要があるらしい。

高地トレーニングのタイミングは、高地から降りた直後は血漿量の減少により一時的に身体が重く感じることがあるが、下山後2-3週間目にパフォーマンスのピークが来るとされているので、それを計算して合宿の日程を組むと良いのかなと思います。

LHTL戦略を踏まえて練習場所の選定をできると昨年以上のトレーニング効果を得られるだろうと思うので試してみたいと思う。

引用元

Levine, B. D., & Stray-Gundersen, J. (1997). “Living high-training low: effect of moderate-altitude acclimatization with low-altitude training on performance.” Journal of Applied Physiology.

Millet, G. P., et al. (2010). “Combining hypoxic methods for peak performance.” Sports Medicine.

Stray-Gundersen, J., et al. (2001). “Living high-training low altitude training improves 5,000m performance by monitoring maximal oxygen uptake.” Journal of Applied Physiology.

次回:集団内の安全地帯

1/19

論文要約

集団内の安全地帯

人によって好みがあると思うので推奨するということではないが、プロの集団から得たビッグデータから見る理想的な位置取りについての研究結果の話をします。

集団のどこに位置するかは、単に風よけとしてのメリットだけでなく、落車に巻き込まれる確率とアタックに反応できる確率のトレードオフという話は皆さんがご存じの通りだと思います。この安全かつ効率的なエリアが数値化されていたので紹介します。

位置取りの黄金律(?)は、集団の全長の前方10%~30%かつ左右どちらかの端に近い位置が最も生理的コストが低く、かつ回避行動がとりやすいエリアと示されています。

研究の対象が日本の学生やアマチュアレベルのものではないので、自分たちが走るレースでの最適な位置は違うはずなので、上に書いた位置取りの黄金律を頭の片隅に置いておけばいいのかなと思います。

引用元

Blocken, B., et al. (2018). “Aerodynamic drag in cycling pelotons: New insights from CFD simulations and wind tunnel testing.” Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics.

Ooms, A., et al. (2020). “Spatial Analysis of Mass Sprints and Crashes in Professional Cycling.” Sports Engineering.

Martin, J. C., et al. (1998). “Validation of a mathematical model for road cycling power.” Journal of Applied Biomechanics.

次回:VO2maxのための30-15

1/20

VO2max

持久系能力を向上させるためには、トレーニングの中でVO2max(またはその90%以上)の強度で合計何分滞在できたかが重要になります。VO2maxで〇分間を〇回というメニューをよく組んでいたが、実は30s-15sが最も効率的であるという研究結果を見つけてしまいました。

30-15の利点は、15秒の短い急速の間に筋肉内のミオグロビンに結合した酵素が再補充されて、次の運動開始直後から高い有酸素代謝を維持できるらしい。酸素の供給量が30-15だとちょうどよくなるということです。

二つ目の利点は、休息を挟むことで糖を代謝した時に生じる乳酸の過剰な蓄積を抑えつつ、酸素を使うミトコンドリアへの負荷を高い状態で継続できる(⇦乳酸は酸素と組み合わさることでエネルギーに変換されるため、乳酸が減れば高い酸素摂取を維持できる)みたいです。

三つ目の利点は、高いワット数を維持できるため、速筋繊維にも刺激を入れながら有酸素系を追い込むことができるということです。

引用元の研究では、エリートサイクリストの30-15を10週間行ったグループは、他のインターバルトレーニングを行ったエリートサイクリストのグループと比較して、VO2max、FTP、最大出力において優位に高い向上率を示していました。個人差はあると思いますが、インターバルの時間としては30-15が良いみたいです。

実際に実施する時は、30秒はVO2maxの約105-110%で10-12本を1セットとして2-3セット行うと書かれていました。

個人差は絶対にあるので、30-15を数週間試してみてVO2maxが上がっていくかどうかを検証してみるといいかもしれません。

Billat, V. L., et al. (2000). “Intermittent runs at the velocity associated with maximal oxygen uptake: a comparison of 30/30 and 60/60 seconds runs.” European Journal of Applied Physiology.

Rønnestad, B. R., et al. (2015). “Short intervals induce superior training adaptations compared with long intervals in highly trained cyclists.” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports.

Buchheit, M., & Laursen, P. B. (2013). “High-intensity interval training, solutions to the programming puzzle.” Sports Medicine.

次回:脳のリミッターの制御

1/21

論文要約

脳のリミッターの制御

持久的運動の限界は、筋肉が動かなくなる前に、脳がこれ以上は危険だと判断して出力を抑えることで訪れます。この脳のリミッターを解除するために、あえて自分自身に特定の言葉を投げかける「セルフトーク」をすることで、脳の主観的運動強度(RPE)を低下させ、疲労を感じるまでの時間を伸ばすという手法があります。

セルフトークには2種類あって、それぞれ脳への作用が異なります。1つ目は教示的セルフトークです。これは「踵を上げない」「呼吸を深く」など、動作に集中させる言葉で、技術的な局面やトラック競技のスタンディングの時等に有効になります。2つ目は動機付け的セルフトークです。これは「まだいける」「耐えろ」「突き放せ」などの感情を鼓舞する言葉で、レース終盤の限界付近で有効です。

動機付け的セルフトークは、前頭前野の働きを通じて扁桃体の不安反応を抑制し、筋肉からの疲労シグナルに対する脳の過敏さを和らげる効果があるらしいです。

海外の研究では、訓練されたサイクリストが2週間のセルフトーク介入を受けた結果、疲労困憊に至るまでの時間(TTE)が平均で18%向上し、同じ高負荷での主観的運動強度(RPE)が有意に低下したらしいです。つまり、心拍数や乳酸値が変わらなくても、きつさの感じ方を変えるだけで出力は維持できるということです。

セルフトークの実施方法は、まずは準備の段階として自分が最もタレる瞬間の思考を書き出します。(例:「もう無理だ」「足が重い」)

次にタレる瞬間の思考を肯定的な言葉に置き換えます。(例:「足が重いのは練習が聞いている証拠」「ここからがライバルを引き離すチャンス」)

最後に普段の高強度の練習からこの言葉を実際に口に出したり、強く脳内で繰り返します。これを実際に自分の中で一番効果的な言葉を探し出すことで、セルフトークでより高い効果を得ることができるはずです。

トラックのタイムレースでは、体力的に余裕のある段階では教示的セルフトークでフォームを安定させて苦しくなってきたら動機づけ的セルフトークで耐えるというやり方もあります。

根性論のように見えますが、割と最近に科学的に研究されているものなので試してみる価値はあると思います。

Blanchfield, A. W., et al. (2014). “Talking yourself out of exhaustion: the effects of self-talk on endurance performance.” Medicine and Science in Sports and Exercise.

McCormick, A., et al. (2015). “Psychological determinants of whole-body endurance performance.” Sports Medicine.

Hatzigeorgiadis, A., et al. (2011). “Self-talk and sports performance: a meta-analysis.” Perspectives on Psychological Science.

次回:アクティブリカバリー

1/22

論文要約

アクティブリカバリー

アクティブリカバリーのメカニズムと最適な強度について紹介します。

高強度運動後、身体には乳酸、水素イオン(⇦実は乳酸よりも水素イオンによる酸化の方が疲労の直接原因になっている。「足に乳酸を感じる‼」⇒「足に水素イオンを感じる‼」)、アンモニア(⇦別名エネルギーの燃えカス、筋肉から生成されて肝臓で処理しきれなくなったアンモニアがやる気の低下や意識の霧散などの中枢性疲労をもたらす)、無機リン酸(⇦筋収縮に必要なカルシウムの働きを阻害する)などの代謝産物が蓄積し、筋損傷にともなう炎症反応が起こります。

アクティブリカバリーは完全休養と比較して、これらの物質の除去を早め、心臓血管系および自律神経系の回復を促進させる効果があります。アクティブリカバリーが回復を早める主な理由は以下の2つです。

1つ目は低強度の運動により骨格筋がリズミカルに収縮することで静脈還流を助け、筋組織に滞留した代謝産物が速やかに肝臓や他の組織へ運ばれるためです。2つ目は、血液中に残された乳酸はアクティブリカバリー中の遅筋繊維において優先的なエネルギー源として酸化・再利用されるためです。

海外の研究では、複数のの強度で代謝産物の除去率を測定した時に、VO2maxの30-40%程度のきわめて低い強度が最も代謝産物の除去をさせることができていたらしいです。強度が高すぎると新たな乳酸を生み、弱すぎると血液の循環が不十分になります。

実際にアクティブリカバリーを行うときは、30-60分でFTPの40-55%(または最大心拍数の60%未満)でやるといいみたいです。強度がFTPの65%を超えると、回復ではなく追加の疲労を蓄積させることが分かっています。

Menzies, P., et al. (2010). “Blood lactate clearance during active recovery after an intense running bout depends on the intensity of the active recovery.” Journal of Sports Sciences.

Hausswirth, C., & Mujika, I. (2013). “Recovery for Performance in Sport.” Human Kinetics.

Monedero, J., & Donne, B. (2000). “Effect of recovery interventions on lactate removal and subsequent performance.” International Journal of Sports Medicine.

次回:運動直後のグリコーゲン再合成

1/23

論文要約

運動直後のグリコーゲン再合成

運動直後の骨格筋は、細胞膜にある糖輸送体が活性化していて、血液中の糖を筋肉へ取り込む能力が高まっています。このゴールデンタイムに適切な栄養を送り込むことで、枯渇した筋グリコーゲンを通常よりも速いスピードで回復させることができる。

炭水化物だけ、タンパク質だけ、のような単体摂取ではなく、炭水化物とタンパク質を同時に摂取することが回復の鍵になります。以下がメカニズムです。

・特定のアミノ酸(特にロイシンなど)と炭水化物を同時に摂ると、炭水化物単体で摂取した時よりも膵臓からのインスリン分泌が強力に促進されます。

・高いインスリン濃度は、筋細胞内のグリコーゲン合成酵素を活性化し、取り込まれた糖を効率よくグリコーゲンへと変換します。

・同時に摂取されたタンパク質は、運動によって促進された筋タンパク分解を抑制し、修復へとスイッチを切り替えます。というのが炭水化物とタンパク質の共摂取による回復のメカニズムでした。

海外の研究では、共摂取をしたグループは、片方の摂取したグループと比較して、筋グリコーゲンの再合成率が約2倍になったそうです。また、運動直後と2時間後の摂取を比較すると、直後の方が圧倒的に高い合成率を示したそうです。

炭水化物とタンパク質の黄金比は、「炭水化物3~4:タンパク質1」です。

運動直後は「プロテインだけ」「ライスだけ」ではなくセットで摂取するようにしましょう。

Ivy, J. L., et al. (2002). “Early postexercise muscle glycogen recovery is enhanced with a carbohydrate-protein supplement.” Journal of Applied Physiology.

Van Loon, L. J., et al. (2000). “Maximizing post-exercise muscle glycogen synthesis: carbohydrate supplementation and the application of amino acid or protein hydrolysate mixtures.” The American Journal of Clinical Nutrition.

Beelen, M., et al. (2010). “Nutritional strategies to promote postexercise recovery.” Sports Medicine.

次回:ポラライズドトレーニング

1/24

論文要約

ポラライズドトレーニング

多くの選手は練習時間の大部分をそこそこきつい強度であるテンポ走やSST域で過ごしてしまいがちですが、ポラライズドトレーニングは低強度と高強度の二極化をさせて中強度を避けます。練習時間全体の中の割合としては、低強度80%、中強度0%、高強度20%で行うのが良いらしいです。

⇩中強度(テンポ、SST等)を避けるべき理由

・中強度での走行は低強度と比較して自律神経系へのストレスが指数関数的に増大する。

・中強度の練習を繰り返すと、疲労によって高強度の日に真の限界まで追い込めなくなる。その結果、PGC-1α(ミトコンドリア新生のスイッチ)を叩く強力な刺激が不足して成長が停滞する。

海外の研究では、ポラライズドのグループとスレッショルド(中強度中心)を比較したら、ポラライズド群の方がVO2max、FTP、最大パワーにおいて有意に高い向上を示しました。スレッショルド群は疲労度が高いわりに、パフォーマンスの伸びが鈍化したことが示されています。

各パワーゾーンの数値をしっかりと理解して、低強度80%、高強度20%を目安に練習計画を組めると良い感じに強くなれるんじゃないかなと思います。

Seiler, S. (2010). “What is best practice for training intensity distribution? : rooms for variation in tolerance of training volume and intensity.” International Journal of Sports Physiology and Performance.

Neal, C. M., et al. (2013). “Six weeks of a polarized training-intensity distribution leads to greater physiological adaptations than a threshold model in trained cyclists.” Journal of Applied Physiology.

Stöggl, T., & Sperlich, B. (2014). “Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity or high volume training.” Frontiers in Physiology.

次回:事前刺激が与える影響

1/25

論文要約

事前刺激が与える影響

レース直前にごく短時間の高負荷刺激を入れることで、その後の最大出力が一時的に向上する現象を「活動後増強(PAP)」と呼びます。

メカニズムとしては短時間の高負荷運動により、筋肉内の収縮タンパク質であるミオシンの構造が変化し、カルシウムイオン(⇦アクティブリカバリーについて書いた時にも少し触れた)に対する感受性が高まります。これにより、同じ神経伝達強度でもより強い収縮力が生まれるらしい。

引用した論文では、運動前に適切なPAP刺激を入れることで、爆発的動作が平均して2-5%向上することが示されています。また、スプリント開始直後のピークパワー到達時間が短縮することも確認されていました。

具体的な実施方法としては、軽い回転でのアップの後に6秒の全力もがきを2-3本行うのが良いみたいです。もがきが10秒を超えてしまうと疲労が残ってしまうのが注意点で、活動後増強の効果は長くは続かないのでロードレースのアップとしてはあまり意味がないです。

序盤から高強度のダッシュが必要になるレースでぜひ試してみてください。

Sale, D. G. (2002). “Postactivation potentiation: Role in human performance.” Exercise and Sport Sciences Reviews.

Gouvêa, A. L., et al. (2013). “The effects of postactivation potentiation on sport performance: a meta-analysis.” Journal of Strength and Conditioning Research.

Silva, R. A., et al. (2014). “Acute prior heavy exercise fatigue and the performance of a cycling sprint.” Journal of Science and Medicine in Sport.

次回:血を止めて覚醒させる

1/26

論文要約

IPC(遠隔虚血プレコンディショニング)

IPCとは、運動の直前に血圧計の帯などを用いて腕や足を数分間圧迫し、一時的に血流を遮断(虚血)した後、再び解放するプロセスを繰り返す手法です。なんか過激で怪しいやり方じゃねえか?って感じですが身体を圧迫するだけなので合法です。

IPCの効果

・血流再開時に強力な血管拡張物質である一酸化窒素(NO)が大量に放出され、運動中の筋組織への酸素運搬効率が最大化される。(実は山﨑が東京エンデューロで試用したビーツジュースの摂取にも同様の効果があります)

・一時的な低酸素ストレスが、細胞内のミトコンドリアを省エネかつ高効率モードに切り替えさせてくれる。これにより、高強度運動中の乳酸蓄積を抑えつつエネルギー産生を維持しやすくなる。

・腕を圧迫しても、その効果は神経系を介してペダリングの主役である足の筋肉にも波及する。

引用元の研究では、IPCを行った訓練済みのサイクリストは、偽の処置(プラセボ)を受けた群と比較して、4kmIPにおいて平均約3秒の短縮が報告されている。3秒の短縮は劇的なパフォーマンス向上と言えるでしょう。

IPCの実施方法は、完全に脈が止まる圧力で腕または脚に帯を巻き、運動開始の45-90分前には終了するように、「5分圧迫/5分解放」を3-4セット繰り返します。完全に血流が止まっていて、正確な時間を守ることが成果を得る鍵になるので、変なことはしない方がいいです。まずは練習で試してみたいですね。

Jean-St-Michel, E., et al. (2011). “Remote postconditioning at a distance: improved peak performance in trained cyclists.” Medicine and Science in Sports and Exercise.

Bailey, T. G., et al. (2012). “Remote ischemic preconditioning prevents reduction in brachial artery flow-mediated dilation after strenuous exercise.” American Journal of Physiology.

Salvador, A. F., et al. (2016). “Ischemic Preconditioning and 4-km Track Cycling Time Trial Performance.” Medicine and Science in Sports and Exercise.

次回:頭部の位置の空力的影響

1/27

論文要約

頭部の位置の空力的影響

自転車走行時の空気抵抗のうち、人体が占める割合は約70-80%になり、その中でも頭部は全面投影面積の大きな割合を占めるだけでなく、その背後に生じる乱気流の質を左右するため、CdAに大きな影響を与えます。

頭を下げて全面投影面積を減らすのと、エアロヘルメットのテール部分を背中に密着させることで乱気流が抑えられるということは常識ですよね。

引用元で示されている数値の面を紹介します。頭を最も低く下げた状態は、顔を上げた状態と比べて、空気抵抗を10-15%削減できることが示されていました。これは45km/hでの走行において約25-40wの節約に相当するらしいです。

肩を耳に近づけるようにすくめると、ヘルメットが背中のラインにきれいに合うようになるらしいです。僧帽筋を鍛えましょう。

空気抵抗削減のために無理に前傾の深くするよりも、最初に風にあたる頭と肩の全面投影面積を小さくした方が下半身の可動域の確保とエアロの両立が可能になるという説もあります。

García-López, J., et al. (2008). “Aerodynamics of cycling: Effect of head position and helmet design on drag.” Journal of Sports Sciences.

Barry, N., et al. (2012). “Effect of head position on the aerodynamics of a world-class time trial cyclist.” Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part P: Journal of Sports Engineering and Technology.

Beaumont, F., et al. (2018). “Computational fluid dynamics (CFD) optimization of a time trial cyclist’s head position.” Journal of Biomechanics.

次回:冷却戦略

山﨑直人

山﨑直人

環境情報学部1年

最近の記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


アーカイブ

月を選択

最近の記事

  1. それでも!!!!

  2. 1/30 アクティブリカバリー

  3. 歯車は歯車の意地がある

  4. 1/29 L2 3h ジム

PAGE TOP