1㎞TT OrではなくAndの精神

インカレDay1 1㎞TT 1.05.677 12位

TPを5位入賞で終えて自分の脚の調子も悪くなく、1㎞TTに向けて気持ちの部分ではこれ以上ない状態だったと思う。

TPが終わってすぐにホテルに戻ってシャワーを浴び、部屋でカレー。減量中は何度もカレーを食べた。カロリーを制限して摂取カロリー<消費カロリーが常態化すると体が省エネモードに入ってしまって元気が出なくなるんだけど、カレーを食べると力が出る気がする。スパイスの力?西友のお墨付きシリーズが好き。

その後は身体をとにかく休めたくて部屋をキンキンに冷やしてゴロゴロしてた。完全に眠ることはできなかったが、体も頭もかなりフレッシュな状態に戻すことができた。なによりも会場の独特な雰囲気から逃れて部屋で静かに休めた事がよかったと思う。余裕をもって会場に戻ると逆に集中が切れてしまいそうだったので、ぴったり会場についてすぐにアップを開始した。

既にTPを走っていたので、アップは短めに。最初はベース強度で身体を起こしてその後高い強度の負荷を短く繰り返して刺激を入れた。負荷を最大にして高トルクをかけたり、ローラー上でスタートの動きを確認してみたり。短距離種目はフレッシュさも重要でアップ後にしっかり回復したい派なので十分に体が動くことを確認した上で早めに切り上げた。

付添いは山根さんとりさこ、あべちゃん。直前で透明のバイザーよりスモークの方がかっこいいことを思い出して、阿部ちゃんに取りに行ってもらった。かっこよさが全然違う。ありがとう。

二人の方が頼もしい表情してて好き

スタンの時のクランク位置は水平に限る。右足が利き足なので、二歩目で強く踏み込めるように左クランクが前。

これまでの1㎞TTの中で1番集中できていた。今年から短距離種目(特にTSP)に真剣に取り組むようになったが、自分は瞬発的に集中するのが苦手だなと感じていた。いや、そもそも集中するのが苦手な気もする。

だから0.01秒を争う短距離のタイム種目では苦労した。特にTSPのスタートの緊張感は半端じゃなくて。最初はフライングしまくりで苦労していたが、LEAPの競走部OBにタイム種目のスタート前の集中のコツ(以前ブログに書いた)を聞いてからはだいぶましになったと思う。ゴールした後の感情にフォーカスする方法。それがこの日はかなりハマったのを覚えている。

たぶん、それが出来たのはその感情をこれまでで一番鮮明にイメージできたからなのだと思う。そしてそれはこのインカレにかけてきた想いの大きさでもあるんだろう。

やはり、インカレの醸し出す空気感というか雰囲気は独特で、他のどの大会とも違うものがある。しかも4年生のインカレともなるとそれはまた格別。そして個人の感情がまたその雰囲気や空気感を作り出していて。試合筋とか4年筋とか冗談っぽく言ってきたけれども、きっとそれもこの類のもので会場の雰囲気や大会に対する想いが感情に影響していて、それがパフォーマンスに繋がっているのだと思う。

緊張はなかった。1㎞TTだけを考えれば他にもっとできることがあっただろうが、複数種目出場する中でいまのベストはやったという割り切った自信。ただベストを尽くす。それだけを考えてスタートに向かった。

そういう良い集中状態にいたおかげでスタートの動きはかなり良かったと思う。こういう状態に入れるとカウントの音だけがよく聞こえて、なぜか視力も良くなってカウントの電光掲示の数字が良く見える。

TIPでなんどか試行錯誤した結果、スタート後にブルーバンドに落ち切る事を決めていた。ストレートですらある程度の傾斜があるので一気に落ちて速度に乗せて第1コーナー終盤でスプリンターレーンに入る感じ。普通にショートカットでもあるが、衝撃をいなす技術がないとスプリンターレーン突入時に割と衝撃が来るので、注意してほしい。

第3コーナーに入り、遠心力でこれ以上はダンシングできない、というところでシッティングに切り替えてほんの一瞬力を抜いて踏みなおし。

1周回ってきてホームストレート。第1コーナーギリギリまでブルホーンで加速する事を意識してDHバーに持ち替えたあと、トップスピードをさらに上げることを意識。その後はただただ耐えるだけ。慶應の応援がよく聞こえてきて力になった、というか勝手に踏まされた。止まってしまいそうだったが気合いで踏み抜いた。

人生最後の1㎞TTはこれまでで最も早く終わった。だが、自分より速い選手が11人もいた。


取り組み

そもそも4年生のインカレで1㎞TTに出場することになるとは思っていなかった。正直に振り返れば高校2年生のインハイでビリに近いような順位を取ってからはできるだけ1㎞TTを避けてきた。だが、去年のどこかのタイミングで短距離班ならA基準だよね、といって短距離班を撤廃した手前、自分が短距離を名乗るにもA基準はマストで必要だった。(ただ、今回のインカレの結果をみても短距離で戦うにはA基準は最低限のスタートラインであり、それも取れないのに短距離に集中するのは時期尚早であると思う。)

そこで基準獲得を目的に出場した松本トラックは結構いい思い出。

見事に3人ともA基準を獲得出来て無事に短距離班となり、TSPも慶應記録を大きく更新した。この時は既にTSPがかなり楽しくてインカレもTSPで出るものだと思っていた。まだまだ伸び代があってTPよりも順位が期待できるのではないかと言われていたし、思っていた。

A基準を獲得したことでこの大会で1㎞TTに出場する可能性が生まれた。だが、この時の私はあくまでロードとチーム種目でポイント獲得することを目指していて、その他の個人種目については考えていなかった。だからロードの全国大会が集中していた6月を終えるとすっかり中長~ロード選手に戻ってしまっていた。

その後、かなり間が空いて出場を決めたのはエントリー期限直前になってからだった。インカレMTGにてまだ出場を決めかねていることを伝え、その週の修善寺の計測会での結果をもって最終決定することとなった。その修善寺での計測会では1.06後半という結果だった。個人トラックのタイム等から入賞ラインは4秒台と推測され、2秒近く縮める必要があった。しかし、全日本ロードによる怪我で試合数日前に練習を再開した中での結果だったので、インカレまでの期間で縮められるような気がした。まだタイムを伸ばしていけるという手ごたえも感じていたため、出場することを決めた。

だが、あくまでワンチャンスにかけた出場であり、優先順位的には出場した4種目の中で一番低くせざるを得なかった。結果的に1㎞TTだけ入賞できなかったのはそれだけの時間や労力を割けなかったからだろう。

正直、インカレを振り返って今回1㎞TTに出場したのが総合的なリザルトを追求する上で正解だったのかはわからない。少なからず翌日のオムニアムに疲労が響いただろうし、1㎞TTに向けた練習時間にもっとOMやロード、TPに向けた練習を出来ただろう。だが、その一方で1㎞TTでベストを出せたことが自信に変わっていたのかもしれないし、1㎞TTに向けた練習が他の種目にもいきていたのかもしれない。だからわからないままだし、それを判断することはできない。

だが、入賞できなかったからといってこれまでの取り組みが否定されるわけではない。サポートに申し訳ないと思わなかったわけじゃないが、ベストを尽くす努力をしなかったわけじゃない。だから感謝だけを伝えたい。

そもそも確実に得られる結果を求めて取り組んで来たわけではない。これまでずっとこの種目に対する憧れというか未練のようなものはあって、結果以外も含めて振り返れば出場してよかったと思えている。

できるかわからないけど、やってみたい。それが始まりで、それで良くて、それで許されるのが学生スポーツだと思っている。

自分の中でこのインカレに自分史上最強かつ最高とサブタイトルをつけて取り組んで来たが、単純なフィジカル勝負で過去の自分に勝つことができたのが今思うと凄く嬉しい。もうずっとTOJを勝った時がピークだと思っていたが、最後の最後にもう一度成長を感じられて嬉しかった。

また、OrではなくAndの精神、というのはLEAPでも大事にしている考え方だが、ロード選手でも5秒くらいは出るんだぞ、という事を示せたことの価値はあると思う。むしろロード選手でも5秒だせる、というよりも5秒出せるからインカレロードでも6位になれる、と考えてもらいたい。


私はタイム種目が好きである。結果を左右するのが自分だけだから。自分の強さや成長を絶対的なタイムとしてみることが出来るから。でもタイム種目は怖いとも思う。実力の停滞や自分の弱さが目に見えてわかってしまうから。

でもロードレースという1レースで1人しか報われず、運によって結果が大きくされるような厳しい世界を主戦場に選んでしまった自分にとってタイム種目の存在はとても貴重で欠かせなかったと思う。本来のタイム種目の面白さと言われる突き詰める部分には今回到達できなかったけども、それでもタイム種目をかじれたことが楽しかった。

いつもモチベーション高くタイム種目に取り組めていたわけではない。タイム種目に取り組んでいればいつか伸び悩む時が来ると思う。これは岳がいうところの壁にぶつかる、ということ。

競技的には壁にぶつかってからが本番なのだろう。だけど、つまらなくなったら他の種目に逃げてもいいと思ってしまう。IPやってみて、伸びなくなったらハロンやってみて、伸びなくなったらTTやってみて。

それでまたIPをやったらタイムが伸びているかもしれない。色々な可能性を試して行って欲しいと思うし、特に最初の方は選手としての幅を広げるのにも繋がるはず。

代交代の時に、1kmTTでインカレ入賞はかなり難しいと伝えたが、その一方で1kmでインカレ入賞できるレベルになれば他のどの種目でも入賞できる可能性があると思う。

そのくらい自転車競技の基礎であるこの種目。自分自身が嫌がってたから偉そうには言えないけど、後悔しているからこそ強く勧めたい。来年、あっさりと慶應記録が更新されてしまう事を期待しています。

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