インカレブログ③TP 思い出への挑戦

TP 5位 4分17秒477

もうあの日から二ヶ月も経っていることが信じられない。競技生活を通して最も誇らしいのも最も悔しいのもこのTPである。

素晴らしい結果だといってくださる方は多い。きっとインカレ前の自分たちにとっても想像以上だし、去年の目標設定時からしてもそうだろう。しかし、なぜいまこれほどまでに悔しいのだろうか。

TPは書いていて悔しくなってしまい、ブログを閉じてしまって全然進まないのでTTを先に出した。しかし、このブログのせいで後ろが詰まっていて、さらに4年生のブログが公開されないせいで後輩のブログが詰まっている、と聞いたので。2か月の節目に公開しようと思う。

現役時には、はっきりとTPを一番頑張っている、と認識していたわけではないが、引退してからははっきりとTPを一番頑張ったと思う。そういえば、まだTP組で飲みに行っていない事を思い出したので、近々5人で飲みにいこう。


目標設定 4分15秒切り

この目標になったのは去年のインカレが終わって割とすぐだったと記憶している。確か代交代をしてチームの目標設定をしている時に、別軸としてTPメンバーの中で設定されたはず。15秒が先だったか、5位が先だったかはあまり記憶していない。

ただ、明確に言えることとして、もう7位や8位という順位では満足できなくなっていた。目標はやはりワクワクするものでなければ目指そうと思えないし、掲げる意味もない。

特に構成メンバーの個人における戦績の変化も影響しているのだろう。個人でもコンスタントにIPで入賞し続ける岳、こうせいと壮太朗もクリテリウムを中心に全国入賞は当たり前としてきた。だからその4人で走ってギリ入賞という目標は個人種目に優先して掲げるには微妙過ぎた。

TPを1番に頑張りたい、この想いは共通だった。TPの強さが大学の強さを示すようなものだから。そして個人種目よりも頑張りたいからこそ、個人種目で到達可能そうな目標を掲げるのはコストに合っていないように感じた。

そのようにしてこの5位という目標が掲げられたのだと思う。

そしてそのTPに絶対にでよう。 そう決めたのは去年の9月15日。岳からのLINE。

「正直、西川山岳で走りたい。」

恥ずかしい事を言ってくれるもので。でない選択肢はなくなった。絶対にTPにでよう。何が何でも出よう。そう決めた。何走でもよくて、自分がどれだけ引けたかもどうでもよくて、とにかく出ることが大事だった。

自分の納会資料にはこう書かれていた。

「現段階では1走を担う予定だが、目標達成率をあげるために1〜4走のどこでも走れるようにフィジカルを取り戻していきたい。」

見栄えよく、「目標達成率をあげる」なんて書いているけど、そんな事は1mmくらいしか考えていない。絶対に選ばれる選手になること、ただそのためだけ。

しかし、出るだけでは満足できないな、とも思っていた。

岳とこうせいが2年生の時のインカレのTPの話をよくしていたのを覚えている。あの時ほどの達成感を感じたことはなかったと。二人がその話をするとき、いつも置いてけぼりを喰らった。私はそのインカレには参加できなかったし、ライブも見ていなかったから詳細はわからない。でも、それはきっと2人にとって初めてチームで掴んだ全国入賞で、いわゆるハマったという感覚もあったんだと思う。

チームを離れていた身でこんな事を思うのも傲慢だけど、自分がメンバーにいないTPが二人の中で一番の思い出になっている気がして悔しかった。そういう意味では慶應記録を塗り替えるというのは当たり前の目標で、むしろ二人の思い出を塗り替えるのが個人的な目標になっていたと思う。だから、とにかくこのTPを走ることは自分にとってのマスト目標だった。


取り組み

とはいえ、メンバーの半分以上が就活を迎えたため、チームとして取り組めたことは多くなかった。それこそパレートの原則に照らし合わされた本質的な20%の1次的な課題に限られた。

基本的にチームで行ったのは

・月に2,3回TIPでTPを走り、技術を磨く。
・一回一回、しっかりと振り返る。
・改善点を見つけ、解決策まで考えた上で次のバンク練の設定ラップタイムと走順まで決めておく。

シンプルだが、これがすべてだった。それ以外にも「ぬっきグル」にて意見交換や情報交換は行われたものの、個人のパフォーマンスの上がり具合を見つつ、それを最大限引き出すための走順、ラップタイムを探っていく、というアプローチをとった。

シンプルだからこそ、一番難しかったのはTPをする機会をいかに作れるかというところにあった。

そして、この一回一回の練習の質を限りなく最大に近づけてくれたのはマネージャーの存在に他ならない。ビデオで走りを振り返り、改善点を探し、すぐに解決策を導くところまでセットで行えたからこそ、質の高いPDCAを回すことが出来たのだと思う。それだけでなく、毎回のバンク練で毎回のタームを最大限有効活用するためにバンク練をmanagementしてくれた。マネージャーはサポーターではなく、マネージャーなのだという意識が確実に伝わっていたのは去年からの大きな変化だった。

就活が終わった7月、8月は高い質のTPが繰り返された。私の全日本での落車があったり、岳の調子が上がり切らなかったりで、個人のパフォーマンスについては未知数すぎて変に走順や牽き具合を変えることはしなかった。岳はとても苦しかっただろうと思うが、強い気持ちで周りに感じさせないでいてくれたと思う。


当日

レース当日のルーティンなどは持ち合わせていない。決まったアップメニューもない。だからできるだけいつも通り、練習通りを再現する事を意識していた。もし調整にしくじっても最低限いつものバンク練と同じくらいのパフォーマンスは出せるように。

そのため、絶対に周回練習には入りたかった。強度面ではローラーでも十分に体が温まるのかもしれないが、そもそも脚だけ動かすローラーがあまり好きではない事と、最後にコーナーの感覚を確かめておきたかったので。だが、1日目の最終種目に1kmTTを控えていたので出来るだけ朝はゆっくりしたかった。だから宿でウェアに着替えて自走で行く事を選んだ。

周回練は軽ギアで。脚を起こしつつ、バンクの感覚を思い出す感じで。動画を撮ってもらってフォームの最終確認も。大藤さんのアームレストと小原さんのヘルメット、直前に導入したトラックワンピのおかげで一気に空力レベルが向上してしまった。本当にありがたい。

ゼッケン張りはりさこにお願いした。私がマネージャーをしていた時からその働きぶりは良く知っていたし、直近では減量を手伝ってもらっていて何事にも全力で抜かりない彼女に任せておけば間違いない、という信頼があった。

アップは感覚派。足りないよりはやり過ぎを目指している。そもそもスロースターターだし、またアップで疲れて踏めなくなるほど練習していないわけじゃないから。

栄養記録を見ると、この日の朝ごはんは合宿で中谷が食べていて美味しそうだった混ぜるだけのガーリック飯(キッコーマン)。名前の割に脂質が少なくてパワーが出そうだったのでチョイスした。減量中はどうしても元気を失いがちなので資質の少ないものの中でも元気が出そうなものを選ぶようにしている。トラックで結果を出す事は前提としてロードに向けても体重を増やしたくなかった。また、個人的にはカロリーが充満している状態よりも摂取したものが全て消化されたくらいの身体の状態が好きで(ハイキュー好きならわかるかもしれない)今回のTPはあまり栄養を取らないでいく作戦をとった。多分、智也と小原さんは真逆でお腹がちょっとでも空いていると不安になるタイプなんだと思う。

いくら強度の高いTPとはいえ、100kcalも使わない。でも体内のエネルギーが十分でも減少傾向になると身体が省エネモードに入ってしまうことがあるので、それを防ぐためにアップ中にウイダーで糖分を補給した。

2日前から千葉入りし、QOLの高い生活を送っていたせいかこの日はすごくリラックスしてしまっていたので、ぶち上がる動画を見ながら。個人的ブチ上がり動画↓

ローラーだと軽い負荷でクルクルしてしまいがちだけど、重い負荷でも身体を起こしつつ、やや疲労感を感じるくらいに。チップは涼しいはずなのにそれでもアップをしていると汗が止まらなくてうちわサービスがありがたかった。単細胞なのでななちゃんのうちわはぶち上げ材だった。

20分前くらいに切り上げてベロトーゼを履いて準備完了。スロープを登る前に3人と何かを話した気がするが、内容は覚えていない。

だが、私個人としてはスロープを登るとき、やる気と自信に満ち溢れていたと思う。

毎回ホルダーにセットされてからスタートまではあっという間に感じる。恒例になったソロシャスを聞いて集中モードに移行する。この1年、地味にスタンが速くなった。5月まではTPよりもTSPに注力していたし、1kmTTでの出場が決まってからもバンク練ではかなりの時間を割いた。出場はしなかったものの、TSPをやっていてよかったと思う。

1周目 プラン通りのタイムで脚を使う事なくDHポジションに移行。

2周目 5.9

若干目標タイムに届いていないものの、壮太郎が周回を間違えることなくこうせいに変わる(一番重要で、一番不安だった)。

3周目 5.2

前周のラップを聞いてこうせいがあげたのがわかる、0.7秒早まる。でも気持ちの良い上がり方でこれだけラップが縮まった事は驚きだった。

4周目 5.3

こうせいから交代し、想定より早いラップだったことや宇佐美さんの声掛けもあり、キープすることを意識。交代で0.1秒ほどロスが生まれるので実際にキープできた。

5周目 5.0

6周目 5.1

一回目は余程の事がない限り、3周行くと決めていた。余裕を持ってとは言えなかった。2回目に引ける足が残っていたとは言えない。でも自分の回復力と何かあった時はこうせいが回収してくれると信じていた。キープを目指したはずが、やや上がってしまい、また交代前は若干下げて変わっている。動画を見返すとこの段階でそうたろうが苦しそうにしているように見える。車間が安定しておらず、上半身も揺れ始めている。5.0ペースはやはり後ろが苦しかったんだと思う。

7周目 5.3

8周目 5.4

岳に代わり、目標のペースに戻る。とにかく回復する事を意識していた。

9周目 6.0

ラップが急激に落ちてしまう。でもこれはある意味、いつも通り。

10周目 6.0

11周目 5.9

こうせいが1.5行ってくれ、尻上げで交代してくれる。交代時、何か言われたが聞き取れなかった。

12周目 5.7

13周目 5.7

ゆっくりあげる。落ちてしまったラップタイムでは適切な回転数ではないからいつも以上に踏まされてしまい負荷がかかる。2回目で自分がどれだけ引くのかは決めていなかった。ただ1ローテ目で岳がキツそうで長くいった方が良い気がした。

しかし結果的にはそこでラップを維持しきれなかった。

交代後は岳がラップを上げ直してくれた。1コーナーでペースが上がるのを感じた。あやうく千切れるところだったが、正真正銘の気合いを発動させて耐えた。ガクはそのまま最後まで行ってくれた。最後の4コーナ―はこれで最後かぁなんて考える余裕もなくとにかく0.01秒でも早くゴールしようと必死でペダルを踏んだ。人生で最もペダルを踏みしめた瞬間だった。

結果は目標の15秒には届かない17秒だった。他校次第では入賞県外になる恐れもあった。しかし、上位校が次々に崩れ、最終的に5位という結果を手にした。タイム的には目標に届かなかった悔しさと5位入賞を果たした嬉しさと安堵感を感じつつ、一旦感情を保留して1kmTTのために一度ホテルに戻った。


しかし、その保留していた感情の中でも悔しさが今になってあふれ出してくる。

早慶戦での岳の言葉を思い出した。「嬉しい気持ちは一瞬で終わってしまう。」

自分たちよりも速いはずの大学が揃って崩壊していく中で、しっかりと練習以上のタイムを出せたのは誇れることだと思う。岳の言う通り、足繫くTIPに通い、深夜の帰宅を何度も繰り返した結果。それが私たちの強みでもあった。

それでもトラック最終日。順位決定戦を見るのではなく、走っていたかったと思う。欲張りなのだろうが、もっとできたと思ってしまう。いや、実際にもっとできた。それだけいいメンバーが揃っていた。

私にとって結果は単なる副産物ではない。結果が欲しい。しかし、十分な過程を伴わない結果には納得が出来ない。私には思い出も必要。しかし、思い出は結果だけではなく、むしろ多くが過程の部分に宿る。

色々な要因を考えれば、その時の最大限をやってきたという自信があり、過程には満足もある。しかし、その最大限というのが自分の実力不足によって低く留まってしまったことが悔しい。

これ以上はもうタラレバでしかない。結果論でしかない。素晴らしいメンバーが揃い、各自が素晴らしい準備をしてくれた。この4人が揃った事は奇跡といっても過言ではない。

短距離種目にも時間を使いたい中で、多くの時間を割いてくれた壮太朗。

就活で苦しい中でも時間を作ってTIPに来てくれた岳、こうせい。

平田を始めとするサポート。

これまでTPを繋いできてくれた先輩方。一緒に走った纐纈さん、小原さん。

TIPに通い詰めるために多くの援助をしてくださったOBOGの皆さん。

最高の環境があった。だからこそ、もっといい結果を出せたんじゃないかと欲張ってしまう。京産大との差がどこにあったのかはわからない。きっとうちが1.5秒縮められたように京産大も1.5秒縮められたのかもしれない。それでも、後悔は止まらない。

これは部活を通しての後悔でもあるけれど、夢を語り切れなかったし、共有しきれなかった。順位決定戦に行くこと、これを掲げてこのためだけにやってきたらどうだっただろう。だが、もうTPを走ることはない。

果たして思い出の最高地点は塗り替えることが出来たのだろうか。きっとそうであってほしい。そう思うとともに、もっとたくさんTPを走りたかったし、もっと上を目指してみたかった。でも、もう終わり。どれだけ悔しくてもこの種目に出会えてよかったし、この4人でTPを頑張れて走れてよかった。どうもありがとう。

僕らの慶應記録、早く塗り替えてほしいと思う。できると思わなければできない。できるまでやればできる。

だが、そう簡単に塗り替えられてたまるか。

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